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「統合失調症のモータリティ・ギャップ」 by 鈴木健文さん(山梨大学精神科教授) 2018年2月16日 甲府・アピオ

統合失調症の患者さんは、


病気のない人より約20年寿命が短いことが知られています(=モータリティ・ギャップ)。驚かすつもりはないのですが。

もちろんあらゆる病気の人は、病気がない人より早死になのは当然とも言えるでしょう(糖尿病のある方とない方を比べれば明らかですよね)。

統合失調症の方の死亡率が高いのは、若い頃の死亡率の高さによってです。その最大の要因は自殺(や事故)です。心血管系による突然死も少なくありませんが。

もっとも75歳を超えると病気の有無での差がほとんどなくなります。

ということは、若い頃の自殺が減れば、モータリティ・ギャップが縮まるはずです。

統合失調症は適切な治療を行えば良くなる病気です(難治例もありますが)。

治療の中心は薬物療法です。

何よりも重要なのは、きちんと薬を飲むことです。

統合失調症の特徴の一つは、急性期など病気が燃え盛っている時には病識がないことです。病気だと思わない人が薬を飲みたくないのは当然ですよね。

それを補うために開発されたのがLAIです。月に1度の注射をするだけで確実に薬を摂取できます。以前はデポ剤と呼ばれていました。

経口摂取に比べて、再発率も、再入院率も、治療継続率もLAIの方が優れていることが分かっています(処方箋を持って薬局で薬を買い、毎日決められた時に薬を飲むのは高いハードルですから)。

ここまではある意味で当然です。

とても興味深かったのは、試験デザインによって結果にとても大きな差があったことです。

 ・RCT(ランダム化した比較試験)では経口とLAIでは効果も副作用も差がありませんでしたが、

 ・ミラーイメージ試験(ある治療が行われる前と後で治療効果を比較する試験)では、LAIが経口より大きな治療効果があり、

 ・コホート研究(ある集団を追跡し、特定要素のある集団とない集団で疾患の発生率を比較する)でもLAIの治療効果が優れていました。

もっとも、ミラーイメージ試験の場合は、全例が経口薬→LAIという切り替えでした。この場合、新しい治療への期待というバイアスがかかるので、LAIの効果が高くなるのはある意味では当然でしょう。

では、RCTとコホートスタディの差は何でしょうか(フロアからが質問ありました)。

おそらく、服用率の違いではないかと鈴木さんはおっしゃっていました。RCTの治験に参加する方は治療に対するモチベーションが高い(報酬が支払われる場合もあるでしょう)ので、一般の治療より服用率が高まることが予想されます。

また、一般の治療よりも、治療者が患者さんの治療に手をかける(丁寧に説明し、検査も行うなど)ことで、患者さんが医師を信頼して、しっかり薬を飲むということもあるでしょう。

これは、クロザピンという難治性統合失調症の特効薬についても言えるかもしれません。副作用チェックなどをしっかり行うことが義務付けられているため、医師が患者さんに丁寧に接することになるからです。

以上。

ということは、統合失調症の治療にとって極めて重要なのは、治療者と患者さんとの関係だという別の結論も導けるかもしれません。

患者さんが主治医を信頼してきちんと薬を飲めば、病気の再発が抑えられ、再入院を防ぐことができるわけです。

つまり、患者さんの気持ちを汲み取り、治療に関してしっかり話し合い、患者さんが納得した上で治療法を選択する治療者のもとで、統合失調所の患者さんは良くなる、というという当たり前の結論です(治療者としてはやりがいを感じます)。

最近ではシェアード・ディシジョン・メイキングといます。


患者さんをしっかり治しているか、そうでないかの簡便で明瞭な指標は自殺率です。

統合失調症とそうでない方のモータリティギャップが縮まることが、

統合失調症の治療の進歩の指標になるでしょう。


<鈴木健文さんは、魅力的な仕事場を作って優秀なスタッフを育てることが重要だと言います。山梨は人口が少なく人の出入りが少ないので良質なコホートスタディができる。医者同士が顔の見える関係を作り、有効な治療連携を作る可能性がある、とおっしゃっていました。山梨の精神科医療が息を吹き返す予感がしました>



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ドクターサナギ

Author:ドクターサナギ
「あさなぎクリニック」心療内科・精神科・メンタルクリニックの医師です。反田克彦(そりた・かつひこ)と申します。クリニックは山梨県甲府市の蓬沢町にあります。国道20号(甲府バイパス)の近くで、石和や八代(笛吹市)や甲州市からも、大月や都留、南アルプス市や韮崎、北杜市からのアクセスも良好です。臨床心理士によるカウンセリング、うつ病の復職支援施設・リワークポルト、あさなぎカフェも併設されています。

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