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「WHOはガイドライン(2014年)で、薬物使用の非犯罪化を推奨しています」 by 松本俊彦

WHO(世界保健機関)は2014年、各国に規制薬物使用の非犯罪化を推奨しました。



犯罪化によって注射針の使いまわしが行われHIVが増えるからです。その代わりに新しい注射針を配布しました。


薬物戦争


アメリカはニクソン時代の1971年に薬物使用に対する厳罰化(「薬物戦争」)を提唱しましたが、皮肉なことにこの政策によって薬物問題は激増し、死亡者も増えました。


ポルトガル 薬物


ポルトガルは2001年に薬物使用と所持の「非犯罪化」を決めました。

非犯罪化とは、逮捕はするけれど、罰は与えずその代わりに適切な関わり(医療や自助グループへの参加を促すなど)をすることです。その結果HIV感染は減りました。

先日、松本俊彦さん(国立精神神経医療センター・薬物研究部・部長)のお話しをお聞きしました。とても魅力的で説得力のある、あたたかなお話しでした。(「ようこそ外来」by成瀬暢也さんにも通じる内容でした)


以下はそのお話しの骨子です(文責さなぎ:カッコ内は文責者)。

日本の薬物問題の中心は「シャブ」です。


シャブ


それ以外の薬物には流行り廃りがあります。20年前はマジックマッシュルームが流行しましたが、その後は次々に新しい薬物が登場し、取り締まり当局とのいたちごっこが続いています。

2012年から危険ドラッグが激増しましたが、その後取り締まりが強化されて薬物の使用は減りました。もっとも禁止によって横紋筋融解症や肝障害などの重篤な副作用で救急搬送される人や、それまではいなかった死亡者が増えました(アメリカと同様の結果です)。

違法になれば、体調を崩しても病院に行くのを躊躇するでしょう。逮捕されるかもしれないと思うので。


アルカポネ



アメリカの禁酒法がそうだったように、禁止は薬物を地下に潜らせ、政府によるコントロールを不可能にします。

(「覚醒剤は犯罪です」というポスターが、嘱託先に掲げられています。それを見て複雑な思いに駆られます。日本の覚醒剤の厳罰主義は、一見有効に機能しているように見えますが本当でしょうか)

「人間やめますか、覚醒剤やめますか」

薬物使用に対して罰を与えることは問題解決にはつながりません。


イチロー4


叱責されてパフォーマンスが上がる人は、それまでに成功体験を重ねてきたごく少数の人に過ぎません

大多数の人には罰ではなくご褒美こそ必要です。ましてや薬物に手を出す人の大半は成功体験のない人のはずですから。


パピヨン


2度逮捕されると実刑がつきます。2度目の懲役は3年が相場です。刑務所にいる間は薬物のことは忘れます。もう2度とやらないと誓います。ですが、多くの場合には出所した直後に使用します。出所直後が一番重要なのにそこに何の支援もないからです。

「刑の一部執行猶予制度」が始まりました。

3年の実刑だったらそれを2年に短縮して、その代わり出所後しばらく保護観察所や精神保健福祉センターが関わることにしたのです。薬物問題は処罰するものだ、という考えから徐々に治療するべきものだという方向にシフトしていいるのでしょう。

松本さんのお話しで一番印象的だったのは、

依存症の人が薬を辞められないのは、苦痛を取るため(=負の強化)だからだ

です。

依存になるのは、決して快楽を求めてではないと。


フレンチ



人は快楽には対してはすぐに飽きます。フランス料理のフルコースを3日食べたらもう嫌ですよね(=正の強化)。


牛丼



牛丼屋チェーンの社長によると「もっとも重要なのは美味し過ぎないことだ」だそうです。おいしいと飽きるからです。

薬物が止められないのは、それが当初は何らかの役に立っているからです。松葉杖のように。

正の強化(=快感の追求)は飽きるけれど、負の強化(=苦痛の軽減)は飽きない。

1980年にアレクサンダー行った「ネズミの楽園」の研究は画期的です。


ネズミの楽園
Addiction←この動画お薦めです。日本語字幕付き)

ゲージに閉じ込めたネズミと快適な環境で暮らすネズミに、普通の水とモルヒネ入りの水を与えると、

・ゲージのネズミ:モルヒネ水>>>普通の水
・楽園ネズミ:普通の水>>>モルヒネ水

を好みました。

その後、ゲージのネズミを1匹楽園に入れると、他のネズミをまねて普通の水を飲むようになります。しばらくすると激しい離脱症状に襲われますが、それに耐えて、その後は他のネズミと区別がつかなくなります。

ゲージのネズミが本当に欲しかったのは、モルヒネではなく仲間や気持ちのいい環境だったのです。

松本さんは依存症集団療法「SMARPP」を立ち上げ、それが現在全国63か所に広がっています。決して罰は与えません。安心して通える場所です。もちろん薬物を使用していても警察には通報しません。


ホスト営業


集まりを休んだ人には、スタッフ一同から「営業メール」を出すんだそうです(ホストの手法だとご自身がおっしゃっていました)。

松本さんは講演の最後に、

安心して話せる場所を提供すること、

司法以外に出口があることを教えることが重要だとおっしゃいました。


<厳罰主義は問題を解決しません。とても重要で本質的なことを教えていただきました>




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ドクターサナギ

Author:ドクターサナギ
「あさなぎクリニック」心療内科・精神科・メンタルクリニックの医師です。反田克彦(そりた・かつひこ)と申します。クリニックは山梨県甲府市の蓬沢町にあります。国道20号(甲府バイパス)の近くで、石和や八代(笛吹市)や甲州市からも、大月や都留、南アルプス市や韮崎、北杜市からのアクセスも良好です。臨床心理士によるカウンセリング、うつ病の復職支援施設・リワークポルト、あさなぎカフェも併設されています。

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