日本のワイン(正しくは「日本ワイン」)がおいしくなります。

2018年から「日本ワイン」の呼称が厳しくなるからです。
日本産のぶどうを100%使用したワインだけが「日本ワイン」と呼べます。
また、その地域のブドウを85%以上使わないと原産地を表示できなくなります。
日本のワインの78.7%は大手5社(サッポロワイン、サントネージュワイン、サントリーワインインターナショナル、マンズワイン、メルシャン)が作っています。
そして大手5社のワインの原料の95.9%は輸入原料(濃縮果汁や輸入したバルクワイン)で作られています(by ウィキペディア)。

海外では濃縮果汁を水で薄めてワイン酵母を加えて醸造したものや、アルコールを加えたものはワインとは呼びません。それなので、日本のワインは一段低く見られていました。
(だって、ザックリいうと、自動販売機でブドウジュースを買ってそれにアルコールを入れて、国産ワインと言っているようなものですから)
それ以前の日本のワインは、生食用に作られた甲州種などのブドウの余剰分によって作られていました。これは、まあ悪くない発想だと思いますが、
ワインに最適化したブドウではなかったわけです。生食用は酸味より甘味を重視しますからね。
ですが日本でもイタリアンやフレンチがカジュアルになり、日常的にワインに親しむ人々が増えました。それに伴って安くて質のいいワインが日本にたくさん輸入されるようになりました。
危機を感じた日本のワインメーカーは醸造法を洗練させて、高品質のワインを作るようになりました。甲州ワインの品質は本当に上がりました。
ですが、本当に大切なのはブドウ自体の品質です。
ヨーロッパで良質の手ごろな価格のテーブルワインを作ることができるのは、ブドウ作りの機械化を進めたからです。そのためにはある程度の規模の畑が必要です。
日本でワイナリーが経済的に成り立つ畑の広さは2ヘクタール以上だそうです。それだと機械化しても採算が合います。もちろん従来のぶどう棚によるブドウの生産方法では機械化は不可能です。
それなので、新しくワイナリーを作って高品質なワインを作ろうとする新しい作り手は、ギリギリ機械化できる規模の畑を作ります。
ここでちょっとした問題が起こります。それは地場の既存の中小ワイナリ―との軋轢です。
地場のワイナリ―は、元々は大地主さんが多いです(戦後の農地解放で土地の大半を手放しましたが)。
彼らは生食用のブドウの余剰分でワインを作っていました。
ワインブームが日本に到来した時に、彼らは作戦を変えました。高品質なワインを少量作ってブランドイメージを高めて、安価に作れるワインで利益を出す両面作戦です。
これは戦略としては間違ってはいないと思います(そうしなければ恐らく日本でワインは作れないでしょう)。
ですが、もしも新しい作り手が高品質なワインをヨーロッパに負けない価格で作るようになったら大きな脅威になるでしょう。
さて、来年から「日本ワイン」の認定が厳しくなります。
5大メーカーも自社の畑を持ち始めました。危機感を持ったのでしょう。これまで仕入れていたブドウの生産者が高齢化して、後継ぎがいない畑が多くなり、今後安定した原料の供給に不安を覚えたからです。
(と言うよりも、大手メーカーが自社生産のブドウでワインを作る体制を整えたので、ワインの呼称を厳しくすることに同意したのでしょう。「酸化防止剤無添加ワイン」に頼るだけではなく)
おそらくこの方向で日本のワイン作りは進むでしょう。ですから、中小零細の新旧ワイナリーは共存の道を探るのがいいと思います。

どうであれ日本のワインがおいしくなるのは、ワイン好きにとっては大歓迎ですよね。
<県外でワイナリーを運営している方からお話をうかがいました。先見性があり、実行する勇気と力を持った、とても素敵な方でした>
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