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「臨床情報と生物学的データ、双方からのバイオマーカー探索」 by 石塚公子(ジョンズホプキンス大学) 「DISC1のリン酸化が統合失調症のバイオマーカーになるかも」

石塚公子(Koko Ishizuka)さんの講演を聴きました。



石塚公子


本当に興奮しました。聴き終わって涙が出そうになったのは、ユジャワンのショパン・バラード1番以来です。
(ジョンズホプキンスでは若い研究者と若い医者がチームとなって研究をしてそれをベテランがサポートします。右が石塚さんです)。

日本の若い女性の研究者の極めて画期的で、震えるほど魅力的な、心まで温かくなる研究でした。

石塚さんは、バイオロジカルな研究を精神科の臨床に生かすことを目指しています。

彼女のターゲットはDISC1(Disrupted in schizophrenia 1 )でした。


DISC1.jpg


(DISC1遺伝子は、染色体1番と11番の間での転座を有する、スコットランドの精神疾患多発家系から見いだされた。この転座によって染色体1番上で2つの遺伝子が破壊されると考えられ、そのうちの1つがDISC1である。by脳科学辞典)

それまで多くの研究がなされましたが、DISC1と精神疾患に関しては一定した結果は出ていませんでした。

石塚さんは、DSIC1のリン酸化が重篤な精神病MMD(Major Mental Disorders :統合失調症、気分障害)のバイオマーカーになる可能性があることを突き止めました。

以下は石塚さんの研究の要約です(文責:さなぎ)。


動物実験ではDISC1の異常がMMDと関連していることを示唆している。

DISC1が脳発達に果たす役割についてまず説明する。


神経前駆細胞


プロジェニターセル(神経前駆細胞:幹細胞とニューロンやアストロサイトなど成熟した細胞の中間の段階の神経細胞)は増殖する細胞だが、増殖はある時に止まり、ニューロンへと成熟(分化)が始まる。

ニューロンはとても重要で、前駆細胞がそのまま成熟しなければ、脳は正常に機能することができない。

DISC1のリン酸化は、神経前駆細胞からニューロンへの分化を促すことが動物実験で分かった。いわば、DISC1のリン酸化は細胞分化へのスイッチだ。

では、人間のニューロンではどうか。

もちろん脳のバイオプシーはできない。それを調べるために我々は嗅細胞を用いた。嗅細胞は鼻の奥にあるので簡単に生検できる。そしてその分子的な特性はニューロンと極めて近い。

そこで嗅細胞を用いて、MMDのない対照群と統合失調症の人のDISC1のリン酸化を計測した。

統合失調症の人は、DISC1のリン酸化が少なかった。

次に我々は、対照群と統合失調症の患者のIPS細胞を作り、DISC1のリン酸化が細胞の成熟に与える影響について調べた。

対照群では、神経細胞は成熟して14日目にはシナプスのネットワークが出来たが、統合失調症の人では、細胞は成熟せずに増殖を続け、ニューロンのネットワークの構築が遅れた。

だがこれは脳の外での実験だった。

これを脳内で観察する方法はないか。もちろんそのIPS細胞を人と脳に戻すことはできない。

だったら胎児のマウスの脳に移植して観察すればいい。

統合失調症群のIPS細胞と対照群のIPS細胞を別々の色でラベルしてマウスの脳に移植して観察した。

その結果、

統合失調症の患者の神経細胞は増殖段階で止まり成熟していなかった。

次に、我々はDISC1のリン酸化と臨床症状について調べた。

統合失調症ではワーキングメモリーが障害されている。我々はワーキングメモリーの障害とDISC1リン酸化の関連を調べた。

その結果、DISC1のリン酸化の障害とワーキングメモリーの障害には相関があった。

そしてそれは前頭葉の前帯状皮質ACCの厚さと相関していた。


つまり、

DISC1のリン酸化が低いと、脳の成熟が遅れ、前帯状皮質の薄くなり、ワーキングメモリーが障害される。

結論

DISC1のリン酸化は、MDDの生物学的な指標になるかもしれない。タウ蛋白がADの指標になるように。

早期にMDDになることが分かれば、早期に介入することができる。


要約は以上です。


探したら、石塚さんの海外での講演の映像を見つけました。今日の講演の後半部分とほぼ同じ内容です。淡々としゃべっているのにめちゃくちゃ興奮しますよ。

Specific Modifications of DISC1 Protein as a Biological Predictor of Schizophrenia ←クリックをどうぞ。石塚さんの講演がアップされています

<第113回日本精神神経学会学術総会・名古屋にて>



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ドクターサナギ

Author:ドクターサナギ
「あさなぎクリニック」心療内科・精神科・メンタルクリニックの医師です。反田克彦(そりた・かつひこ)と申します。クリニックは山梨県甲府市の蓬沢町にあります。国道20号(甲府バイパス)の近くで、石和や八代(笛吹市)や甲州市からも、大月や都留、南アルプス市や韮崎、北杜市からのアクセスも良好です。臨床心理士によるカウンセリング、うつ病の復職支援施設・リワークポルト、あさなぎカフェも併設されています。

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