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統合失調症について

統合失調症についての講演を依頼されました。久しぶりです。


統合失調症についてお話した経験はこの6年間で3回だけです。認知症、AHHD、社交不安症、うつ病、不眠症、リワークなどが多いテーマです。いい意味で統合失調症は旬の疾患ではないのかもしれません。

以前は「精神分裂病」と呼ばれていました。2002年8月の日本精神神経学会で「統合失調症」に変更されました。

「精神分裂」という病名には誤解や偏見が纏わりついていたからです。なったら治らない。病院に一生閉じ込められる。家族がなったら結婚できない。などです。

ご家族やご本人に病名を告げることはためらわれました。落胆が目に見えたからです。仕方なく「分裂病にならないように、ちゃんと治療しておきましょう」などと言って誤魔化していました。

1952年にクロールプロマジン(ドーパミン遮断薬)が発売され、幻覚や妄想を抑えられるようになり、閉鎖病棟に入院していた患者さんの多くが退院できるようになりました。もっとも「頭が働かない」などの副作用のために服用を中断して、病院に逆戻りする患者さんが大勢いました。

その後、1996年4月に世界から12年遅れて新しい抗精神病薬のリスぺリドン(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)が発売されました。意欲の低下や錐体外路症状(体の震え、じっとしていられない)などの副作用の少ない薬です。患者さんは薬を飲み続けることができるようになり、自宅で生活する方が多くなりました。

2002年にはアリピプラゾール(ドーパミン部分作動薬)が発売されて、自宅療養から社会復帰できる方がとても増えましました。

近年、統合失調症は軽症化しています。早い段階で治療するので重症化しないという面もあるでしょう。予約制のクリニックなので、緊急を要する急性期の方は少ないということもあるでしょう。ですがそれだけではないように感じます。精神科病院を来院する初診患者さん(重症の患者さん)は減っていると最近お聞きしました。

ご自分で来院する方が増えました。うつ病ではないかと思って来る方も、統合失調症を疑って来る方もいます。以前は大勢の家族に連れられて来たり、警察官に伴われて来ることが少なくありませんでした。

病識がある方が多いので、外来で治療するのが一般的になりました。「人格が荒廃する」ような方は外来ではまず見かけません。ビューティフルマインドのように映画で取り上げられたり、ハウス加賀谷さんのように自ら病気であることを明らかにする芸能人もなども増えています。

最近では、病名を告知するのが普通になりました。いい薬があるので、しっかり治療すれば十分に社会生活を営むことが可能だと説明することができるようになりました。隔世の感があります。

地域や文化に関係なく約1%の人がかかるありふれた病気です。病気の原因はまだ分かっていませんが、遺伝と環境が発症に関係しています(一卵性双生児の一致率48%)。10代~20代に発症する人が多いですが、女性の場合には40代~50代で初発する方も少なくありません。環境からのストレスやホルモンの影響などが関係します。

統合失調症の治療の歴史は、薬物療法の進歩の歴史だと思います。その意味では医療が果たした役割は多くはないと思います。

今でも県が実施する実地審査など際には、精神科病院に行き、精神保健指定医として患者さんを診察する機会があります。治療法が洗練されていなかった時代に病気になって、何度も再発を繰り返して病院に長期間入院している方々を目にします。

今だったら多くの方が社会に出て活躍していたのに、と思うと複雑な気になります。

学生の頃、一番興味があった疾患は統合失調症でした。普通の人がうかがい知ることのできない不思議な世界を体験している人に対する純粋な興味でした。精神病理学の先駆者達の書物を繙いては想像を膨らませていました。

最近では、統合失調症に関する本や論文を読むことは激減しました。統合失調症がかつて纏っていた神秘のベールが取り除かれたからです。

3年前に調べた時点では、あさなぎクリニックの初診の患者さんの2.8%が統合失調症で、通院している方の85%が職業を持っていました(定年で引退した方や子育て中の主婦も含みます)。他の疾患に比べて転職が少ない傾向があります。

お薬を飲み続けなければならない疾患なので、通院患者さんに占める統合失調症の方の割合は、現在はもっと増えているはずです。

紹介状に「統合失調症」と書いてなければ、まったくそんな風に思えない方が大勢います。管理的な業務をしていたり、専門職についている方も少なくありません。

<そんなわけで、統合失調症に関してはこれはというようなトピックスは知りません。これもいいことなんだと思います>



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ドクターサナギ

Author:ドクターサナギ
「あさなぎクリニック」心療内科・精神科・メンタルクリニックの医師です。反田克彦(そりた・かつひこ)と申します。クリニックは山梨県甲府市の蓬沢町にあります。国道20号(甲府バイパス)の近くで、石和や八代(笛吹市)や甲州市からも、大月や都留、南アルプス市や韮崎、北杜市からのアクセスも良好です。臨床心理士によるカウンセリング、うつ病の復職支援施設・リワークポルト、あさなぎカフェも併設されています。

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