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電通事件(1991年)は、産業医ならだれでも知っている有名な事件です。

電通事件・1991(=H3年)は、


電通


電通の24才の新人社員が過酷な仕事に耐え切れず自殺して、裁判の結果、1億6800万円の和解金が支払われた事件です。

(企業の新人研修や、産業衛生などに関して講演などをする際には、必ず冒頭でお話ししています)

H12年3月24日に出た最高裁の判決は、原告の完全勝利でした。

[事件の概要]

Aさん♂は新卒で電通に就職しました。研修の後に配属され、その年の7月からはこうなりました。

  ・申告残業=60~85時間 (/月以下同様)
  ・深夜労働=5~20時間 
  ・徹夜=7回位

はじめ、Aさんは意欲的で、上司の評価も良好でしたが、翌年1月になると帰れない日が続き、7月には笑顔が消え、8月にうつ病になり、8月27日に自殺しました。入社1年5か月後でした。

ご遺族が裁判を起こし、最高裁まで争われました。

[裁判の争点は]

 1:業務と自殺との因果関係があったか→○

 2:会社の安全配慮義務違反→○

 3:本人の性格で減額できるか→×

[最高裁の判決の要約]

1:長時間労働とうつ病には因果関係がある
(過労自殺の損害賠償請求で最高裁が初めて因果関係を認めた)

2:使用者は労動者が健康を損なわないように注意する義務がある
(上司が長時間労働で健康が悪化を見過ごすのは安全配慮義務違反)

3:労働者の性格が通常の多様性の範囲ならば、賠償額は減額されない。

原告の完全な勝利でした。

[この判決が意味することは]

1:直属の上司は部下の仕事に対する責任を負う(仕事の結果、勤務体制と勤務状況などに)。

2:自殺の原因は、本人が精神的に弱いとか、仕事のやり方が下手だからではなく、労務の量と質(長時間労働、慣れない仕事、きついノルマ)である。

3:過労は本人の問題というより会社の働かせ方の仕組みにある。会社は労動者が健康を損なわないように配慮する義務(安全配慮義務)がある。


この判決がその後の産業衛生のターニングポイントになりました。

新人社員が過労で自殺すると、会社は1億円以上の和解金をし支払った上で、社会的な制裁を受けるのですから、企業の目の色も変わります。

その後、大企業は争うようにして産業医を雇い入れました。社員が過労で自殺をしないようにという目的だったと思います。

ところが、

電通事件の判決の2年後に、その判決を骨抜きにする法律ができました。

健康増進法(2002年=H14年)です。小泉内閣が作りました(医療費の自己負担を3倍にする法改正と共に)。それは、

「国民は生涯健康な生活を送る義務がある」というものです。

こんな法律は、ナチス時代のドイツにしかありません。

国民の健康を守る義務が、国家や企業から個人になったのです。
労働問題は生活習慣の問題になりました。

その後、

産業医は徐々に、労働者ではなく、企業の側に軸足を置くようになっていきました。

猛省すべき電通は、メディアを牛耳っていることにあぐらをかいて、体質を変えなかったのでしょう。

四半世紀経ってまた悲劇が繰り返されました。電通事件2015です。

三六協定を超える残業を記録しないことを命令し、過酷な労働を強いて若い社員を死に追いやりました。

ですが問題はずーっと深いところにあるように思います。

電通のように協定を越えた残業を記録させない企業は当たり前のようにあります。タイムカードを捺してから、こっそり裏口からはいって仕事をするように命じられたり。守秘義務の関係で具体例は挙げませんが、それこそ多くの有名企業がやっています

それを労働基準監督署に訴える社員も少なからずいます。監督署は当然その事実に気づいています。ですが問題にしません。調べれば簡単に分かるのに。

職務の怠慢です。おそらく経済界から大きな圧力がかかっているのでしょう。

電通事件2015はどういう結果になるでしょう。

恐ろしいのは、25年前と同様に大きな反動が起きることです。

残業代ゼロ制度ができれば、今回の事件は会社側には責任の根拠がなくなり、社員の自己責任になります。


ジャン・ヌーヴェルの設計した電通ビルは、匕首のようです。それを首にあてられていたのかもしれません>




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ドクターサナギ

Author:ドクターサナギ
「あさなぎクリニック」心療内科・精神科・メンタルクリニックの医師です。反田克彦(そりた・かつひこ)と申します。クリニックは山梨県甲府市の蓬沢町にあります。国道20号(甲府バイパス)の近くで、石和や八代(笛吹市)や甲州市からも、大月や都留、南アルプス市や韮崎、北杜市からのアクセスも良好です。臨床心理士によるカウンセリング、うつ病の復職支援施設・リワークポルト、あさなぎカフェも併設されています。

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