さなぎ日記:あさなぎクリニック心療内科のブログです。こころの健康、コミュニケーション、おいしいお店や、映画のことも。

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「死ぬ権利」について。

「死ぬ権利」について。 サムネイル画像
「死ぬ権利」について。僕は「死ぬ権利」について考えないようにして来たことに気づきました。考えると不安になるからです。研修医の頃、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方の主治医になりました。僕はその当時、1秒でも長生きさせることを至上命題としていました。病気の進行は急峻でした。気管切開をし、体も動かせず、声も出せないので、苦しさを訴えることもできません。目玉の動きでYESとNOを伝えられるだけでした。ほどなくして...全文を表示
「死ぬ権利」について。


僕は「死ぬ権利」について考えないようにして来たことに気づきました。

考えると不安になるからです。

研修医の頃、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方の主治医になりました。

僕はその当時、1秒でも長生きさせることを至上命題としていました。

病気の進行は急峻でした。気管切開をし、体も動かせず、声も出せないので、苦しさを訴えることもできません。

目玉の動きでYESとNOを伝えられるだけでした。

ほどなくして、その方はコミュニケーション取ることを放棄しました。うつ状態になったのだと思います。

その後、その人は抗生物質の効かない肺感染症になりました。

延命のための治療は、過酷を究めました。そのたびにその人は苦悶の表情を浮かべました。

おそらくその患者さんは、死を願っていたと思います。そうは言うことはできませんでしたが、僕はそう感じていました。

僕はその人の気持ちに気づいていながら、その人気持ちに気づかないふりをしていました。

それから30年経っても、まだその人の表情を忘れることができません。

果たしてそれは、その人にとって良いことだったのか、間違っていたのではないか、という気持ちが去りません。

それで、僕はこの問題について考えることを避けていました。

当時は、安楽死に対する論議も、インフォームドコンセントという概念さえもなかった頃だ、という言い訳はできます。

ですが、僕は自分自身のためにその人の延命をしていたのではないか、という疑念を拭うことができないのです。


今回の事件はもちろん論外です。

「死ぬ権利」より、「生きる権利」の方が重要なことは論を待ちません。

難病の方が「生きたい」と言いにくくさせるような、社会的な圧力を強めてはいけないと思います。

ですが、これによって、安楽死に対する議論が途絶えることに、一抹の危惧を感じます。

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「死ぬ権利」について。


僕は「死ぬ権利」について考えないようにして来たことに気づきました。

考えると不安になるからです。

研修医の頃、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方の主治医になりました。

僕はその当時、1秒でも長生きさせることを至上命題としていました。

病気の進行は急峻でした。気管切開をし、体も動かせず、声も出せないので、苦しさを訴えることもできません。

目玉の動きでYESとNOを伝えられるだけでした。

ほどなくして、その方はコミュニケーション取ることを放棄しました。うつ状態になったのだと思います。

その後、その人は抗生物質の効かない肺感染症になりました。

延命のための治療は、過酷を究めました。そのたびにその人は苦悶の表情を浮かべました。

おそらくその患者さんは、死を願っていたと思います。そうは言うことはできませんでしたが、僕はそう感じていました。

僕はその人の気持ちに気づいていながら、その人気持ちに気づかないふりをしていました。

それから30年経っても、まだその人の表情を忘れることができません。

果たしてそれは、その人にとって良いことだったのか、間違っていたのではないか、という気持ちが去りません。

それで、僕はこの問題について考えることを避けていました。

当時は、安楽死に対する論議も、インフォームドコンセントという概念さえもなかった頃だ、という言い訳はできます。

ですが、僕は自分自身のためにその人の延命をしていたのではないか、という疑念を拭うことができないのです。


今回の事件はもちろん論外です。

「死ぬ権利」より、「生きる権利」の方が重要なことは論を待ちません。

難病の方が「生きたい」と言いにくくさせるような、社会的な圧力を強めてはいけないと思います。

ですが、これによって、安楽死に対する議論が途絶えることに、一抹の危惧を感じます。

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